その商品は「より多くの人にとって使いやすいデザイン」になっていますか?
ハリエッタヘアカラーシャンプーのポンプにあるギザギザ、なぜついているかご存じでしょうか?これは「アクセシブルデザイン」といって身体機能の低下した方(今回に関しては視覚)に、内容物を適正に識別してもらい取扱い及び使用ができるようにするための包装規格です。JIS(日本産業規格)という経済産業省が管理している日本の技術規格に収載されています。
シャンプーやコンディショナー、ボディソープは似たような形状の容器に入っていたり、浴室の同じ場所に置いてあることが多いですよね。そこで視覚が低下している方でも、シャンプーなのか、ボディソープなのか触ることで識別しやすくしています。シャンプーにはギザギザの、ボディソープには一直線状の記号をつけることになっています。ではコンディショナーの記号は何でしょうか?・・・答えは「記号を付けない」なんです。なるほどという感じですね。

この記号はもともと化粧品のある大手メーカーが1990年代に発案されたもので、当初は実用新案を申請し自社のみで使用されていたそうなのですが、もっと広く使ってもらいたいと実用新案を取り下げ他社でも自由に使えるようにした、という経緯があります。JIS規格に収載されていると共に、日本化粧品工業連合会(日本の化粧品メーカーの多数が参加している業界団体)の自主基準にもなっています。
「推奨」なので普及率はまだ100%ではありませんが、ドラッグストアのヘアケアの棚を眺めると相当数の商品に採用されていることがわかります。一企業から始まった取り組みが30年たって会社の垣根を越え広く使われているという、SDGsの素晴らしい一事例です。ちなみにSDGsのゴールでいうと、健康と福祉の提供(Goal 3)や、性差の解消や平等な世界(Goal 5, Goal 10)などに関連します。
ところで、『この記号は「ユニバーサルデザイン」では?』と思われた方もいるかと思います。「アクセシブルデザイン」と「ユニバーサルデザイン」は実はほぼイコールで、“高齢者や障害者を含むできる限り多くの方が使えるように製品やサービス、建物などをデザインする”という考え方です。ISO(国際標準化機構)という国際的な技術規格(JISの世界版と思ってください)が「アクセシブルデザイン」と呼ぶ、としているため最近は「アクセシブルデザイン」が使われだしてきているようです。「ユニバーサルデザイン」でも普通に通じますが、今後は「アクセシブルデザイン」に次第に統一されていくのかもしれませんね。